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ジョーカー JOKERネタバレあり、なし感想 傑作には違いないが・・・

2020年1月31日

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JOKERタイトル劇場で観ることが出来なかった「ジョーカー」 JOKER。

アメコミ作品として史上初めてヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した大ヒット作です。

 

賛否両論となったこの狂気の悪のカリスマ誕生の物語はハズレの可能性もあり、チェック必須なのでBlu-rayレンタルで鑑賞しました。

なかなかに考えさせられる作品だったのでネタバレなし・ありで感想を書きます。

 

※追記

祝 ! 第92回アカデミー賞

作品賞・監督賞・主演男優賞・脚色賞・作曲賞・音響編集賞・録音賞・撮影賞・メイクアップ,ヘアスタイリング賞・衣装デザイン賞・編集賞の最多11部門ノミネートから・・・

 

主演男優賞 ホアキン・フェニックス

作曲賞 ヒドゥル・グドナドッティル

受賞しましたね ! ! !

 

ホアキンの演技、劇中の楽曲、どちらも素晴らしかったですもの。

 

ジョーカーJOKERのネタバレなしの感想

 

結論から言うと、思っていた内容ではありませんでした。

 

大傑作「ダークナイト」でヒース・レジャーが演じた、「羊たちの沈黙シリーズ」のハンニバル・レクターに匹敵する天才的な悪のカリスマ、ジョーカーが「こうして誕生したのか、おお~!!!」となるストーリーを期待していたのですが、それを期待して観ると「えっ???」ってなります。

確かに物語の舞台やキャラクターはバットマンの世界のものですが、シリーズとのつながりは無いものとして観たほうが良いです。

 

ネタバレなしの感想にこのことを書いて良いか迷ったのですが、私は落胆というか意外だったというか、ちょっと裏切られた気持ちになりましたので、この記事を読んでくれた人には少しでも受け入れやすいようにとお伝えすることにしました。

 

ジョーカー JOKER は一本の作品としては傑作

 

確かに作品としては傑作と言えるものです。

「サスペンス」や「重厚な社会派ドラマ」、主人公のアーサーという「一人の人間の転落の物語」としては素晴らしいです。

 

しかし、本来のベースである「バットマンシリーズ」とは趣向が全く異なり、「だからジョーカーが誕生したのね、」というスッキリした納得は得られません

 

また、「この物語はこうだったんです」、という明確な答えが用意されていないません。

いく通りもの取り方が出来る、観る人によって全く解釈が異なる作品となっています。

 

そういうスッキリしない結末が好きではない方には、お薦め出来ない作品ですね。

 

主人公の「アーサー」が痛々し過ぎて ( 劇中のアーサーの痛いジョークを含め ) 、見ていてかなり陰鬱な気分になってしまいますし。

 

私も一度観たあと、これって繰り返し何度も何度も観たくなる作品かなぁ?と思って、4K-Ultra HDソフトを買うかどうか迷っていました。

 

同じ観て陰鬱になる作品として、大傑作であるデビッド・フィンチャー監督の「セブン」やフランク・ダラボン監督の「ミスト」がありますが、あちらは一度観ると何度でも観たくなる作品。

何が違うかな、と思ったら、あの2本はやっぱり「明確な答えがある事」と、「そう来たか!」という一本取られた感覚の大きな衝撃がカタルシスをもたらしてるという点ですね。

 

「ジョーカー JOKER」にはそういう「カタルシス」を感じられなかったというのが残念だったところです。

 

ただ、バットマンのシリーズと切り離して単独作品として観るとやっぱり傑作なんですよね。

 

この作品で初めてレンタルで二度続けて観ました。

一度目は裏切られた感とあまりの陰鬱さに「何度も観るかな?」と思いましたが、二度目を観た後では考えが変わり、間違いなく何度でも観たくなる作品だということに気付けました。

 

劇中の美しくも物悲しいチェロの主題曲や、非常にセンスの良い選曲の劇中歌も素晴らしいです。

 

「セブン」や「ミスト」とは全く趣きの異なる新たな傑作の登場ですね。

やはり4K-Ultra HDソフトは買うことに決めました。

 

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ジョーカーJOKERのネタバレありの感想

 

※まだ作品を観たことがない方はここからは完全にネタバレ部分が含まれますので飛ばしてください

観たことがある方はこちらをクリック

観る前から、どうやってあの天才的な犯罪者が出来上がるのか、いつ変貌を遂げるのか、期待にワクワクして鑑賞しましたが、最後までダークナイトのジョーカーに繋がることはありませんでした。

 

この物語の主人公、「アーサー」はごく普通の善良な男で、理不尽な世の中の仕打ちに次第に怒りを募らせ精神のバランスを崩していきます。

 

メチャメチャ不憫な主人公「アーサー」

 

映画の冒頭から、ピエロのメイクをして鏡を見ながら自分で無理やり笑顔を作り、涙を流すアーサー。

この時点でもう問題を抱え抑圧された日々を送っている事が分かりますね。

 

楽器店のセールの看板をピエロに扮しアピールするアーサーは、無情にも心ない少年たちによってからかう為に看板を盗まれ、さらに襲われて看板も破壊されてしまいます。

持ち場を離れ看板も失った事をボスから咎められ、給料から天引きされる羽目に。

笑うように顔を歪ませるアーサーの気持ちが痛いほど分かります。

 

脳に障害を持ち、泣くことが出来ず笑うことしか出来ない姿に、この笑っている姿は本当は泣いている姿なんだな、と思うととても不憫ですよね。

コメディアンになる勉強のためにコメディショーに行き、メモを取るアーサー。

ここで、他の観客が笑う所で笑えずにずれて笑うアーサーの姿で、コメディアンになるために致命的な欠陥があることが伺えます。

いつも笑っているのに、本当は笑いが理解できないのでしょう。

それを考えると本当に不憫です。

 

とにかく自分の力だけではどうにもならない境遇に追いやられ、どんどん追い詰められていくアーサー。

悪いことに、自身の持病である突然笑い出して止まらなくなる症状があらゆる場面で事態を良くない方向へと導いてしまいます。

 

極めつけは地下鉄で女性が酔った3人の証券マンに絡まれる場面。

結果的に女性を助けた形になりましたが、いつものように発生した笑いによって自身が絡まれてしまいます。

結果殴られ、蹴られ、持っていた銃で3人を撃ち殺してしまうことに。

女性はその前に別の車両に逃げてしまい、絡んできた3人とアーサー意外は誰もいないため、正当防衛を主張することも出来ません。

 

障害を持っていた事が、苦境にいたアーサーを最早引き返せない状況に追い込みます。

脳に障害を持たず、まともな状態であったなら冷静になり、銃を見せ脅すだけで難を逃れていたかもしれません。

 

それにしても、殺害後テレビで「我社のエリート社員」とトーマス・ウェインに評されていた者たちが実際の中身はただのクズたちであったというのも、エリート層への痛烈な批判で一般人の私たちが反応させられてしまうところですよね。

 

「アーサー」から「ジョーカー」への覚醒は・・・

 

現場から必死で走って逃げ、公衆トイレに駆け込みまるで中国拳法の型のような踊りを恍惚の表情で舞うアーサー。

ここで初めてアーサーに変貌の兆しが見られます。

まるで抑圧されるだけだった自分が解き放たれて自由を手に入れたかのように。

 

しかし、その後物語は進んでも最後までダークナイトや初代バットマンへと繋がる要素はアーサーから感じられませんでした。

 

何度も殺人を繰り返しますが、自分に酷い仕打ちをしたことに対する感情的かつ場当たり的な犯行。

初代バットマンで見せた、ゴッサムシティ全てを巻き込むジョーク交じりの大規模な犯行や、ダークナイトで見せた、警察・バットマンを含む全ての人を煙に巻き手玉に取る、「全てを見透し計算され尽くした犯行」へと繋がる片鱗はどう見てもありません。

ストーカー的な資質が感じられただけです。

 

アーサー本人にはネタ帳を見ても判る通り高い知性はありませんし、あれだけ事あるごとに持病で苛まれるなら大きな犯行など出来るはずがありませんしね。

ただ、後半に至っては持病の症状があまり出なかったので、殺人を繰り返すうちに解放感からか症状の改善が見られたのかもしれません。

 

そして、過去作ではあれだけ制御不能だったジョーカーの個人の範疇を超えた狂気が、本作では一個人の狂気の範疇を超えていませんでした。

私の目には、苛められた子供がただ泣きわめいて暴発しただけに映ったんです。

 

アーサーの劇中での様子を見るととても「あのジョーカー足り得る部分」が感じられなかったんですよね

 

自分に優しくしてくれた小人症のゲイリーを殺さなかった人間的な部分があったのも、狂気の怪人であるジョーカーらしくなく、あくまで普通の人の範疇でしかありません。

 

格好だけはジョーカーになってるけども、ただの刑事から普通に逃げ回るアーサー。

救急車にぶつかられ群衆に助け出された後、ボンネットの上で群衆に崇められ踊り出すアーサー。

ラストで簡単にアーカム精神病院に収監されてしまってるアーサー。

どのアーサーも常人でしかありません。

 

自分の力で崇められたわけではなく、偶然にもそうなってしまっただけの妄想癖のある普通の男。

 

以上のことからアーサーはジョーカーにはならない、と私は結論付けました。

 

後のバットマンとなる「ブルース」の両親である「トーマス・ウェイン夫妻」が暴漢に路地で射殺されるシーンが、原作と同じく本作にも在りました。

 

過去の作品で語られていた「手を下したのはジョーカーだった」という事と、「月夜に悪魔と踊ったことはあるか?」という言葉で撃たれたという設定は、ジョーカーではなく暴動の群衆の1人が撃ち殺したことに、また、セリフも「報いを受けろ」に変えられています。

アーサーにその資質が垣間見れなかった事を考慮すると、ここで暴漢として登場した人物こそが、後にあのジョーカーとなる、と考えるのが自然かな、と思います。

 

アーサーの妄想だったところは ?

 

ちなみに、全てがラストシーンでアーカム精神病院に収監されているアーサーの妄想またはジョークだったのでは ? という考察がありますが、私はそうは思わなかったです。

 

私が妄想だったと思ったのは、エレベーターで出会った同じアパートに住む黒人女性との関係と 、最後のカウンセラーを殺したかのようなエンディングです。

黒人女性との関係は、劇中にもそれを示唆するシーンがありますから間違いないでしょう。

最初の方の、マレーのショーで観客として参加していたアーサーが壇上に呼ばれるところは明らかに妄想なので省きます。

 

ラストのカウンセラー殺しの示唆は、私は現実ではないと思いました。

劇中にてアーサーが自分を陥れた大男のランドルを手持ちのハサミで刺し殺害しますが、その時でさえ返り血を浴び赤く染まっていたうえ、足の裏が血で染まるほどの血が床に溢れ出すことはありませんでした。

精神病院内では、厳重に管理されているはずなので凶器となりそうなものはペンくらいでしょう。

 

足の裏が真っ赤に染まるくらいの血を出そうと思ったら、首を切り裂くか映画「ハンニバル」のレクター博士よろしく「足の付根の大動脈」を切り裂くか、どちらにせよペンくらいの凶器では成しようがありません。

床が真っ赤に染まるくらいの出血であれば、当然大量の返り血を浴びるでしょう。

 

ラストシーンのアーサーは返り血も浴びておらず、綺麗な白の服のままで足の裏に付いた血の跡が足跡として床に伸びていくだけです。

このことから、これはアーサーの妄想・イメージでしかないものなのだろうな、という印象を私は受けた次第です。

 

観る人それぞれによって捉え方が違ってくる作品がこの「ジョーカー」JOKER。

トッド・フィリップス監督たち制作陣の思惑どおりに、観客みんなが「ピエロのように」踊らされてしまっているのも面白いですよね。

 

まとめ

 

本作はアメコミのスーパーヴィランであるジョーカーの誕生物語ではなく、実際にあり得るリアルなジョーカー出現を提示した作品だなぁ、と個人的には思いました。

 

誰しもがアーサーの立場になりうるからこそここまでヒットしたのでしょうね。

一本の独立した作品としては、私も充分すぎるくらいに楽しめました。

 

ただ、やっぱり本来はスーパーヴィラン・悪のカリスマであるジョーカーの誕生の物語として作られるはずだった作品。

私もこの作品が、すでにジョーカーは存在していて暴れまくっており、それに憧れた理不尽な世の中に喘ぐアーサーがジョーカーに近づこうと変貌していく、という感じの話だったならもっとシックリきたのではないかと思いました。

 

心を全て持っていかれるほどのインパクトがある傑作ですが、個人的にはやっぱり現実味のあるジョーカーの誕生物語よりも、アメコミの ( ダークナイトの )「キレっキレの悪のカリスマ・ジョーカー」の誕生が観たいので、別作品としてカタルシスの味わえる作品を作ってくれる事を願います。

 

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